サポートセンター内部(職員)研修レポートVol.2

少し前のことになりますが、当センター職員研修の報告をさせていただきます。
2月8日の内部研修のテーマは「当事者の声を聴く」でした。今回は泉区在住の渡邉美穂さんに当センターにお越しいただき、自閉症についていろいろなお話をお聞きすることができました。美穂さんは自閉症と構音障害を抱え、思っていること、考えていることはたくさんあるけれどコミュニケーションがうまく取れずにとても苦労されていました。現在はお母様の口話通訳と書字で相手に気持ちを伝えています。ピース・スマイルの計画相談支援や、オールハンズ・なのはなのヘルプサービスを利用しながら、大学卒業後の地域での自分らしい生活を模索しているところです。今日は、そんな美穂さんのお話と職員の感想をご紹介したいと思います。

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こんにちは。木曜日に、移動支援の時にお邪魔している渡邉美穂です。本日は貴重なお時間を、私の話を聞く時間にしていただきありがとうございます。私となのはな会との関係は、私がなのはな園にお世話になった時から数えると25年になります。なのはな園での私を知っている方は、わたしがみなさんの前でお話をする姿を誰が想像していたでしょうか。皆無だと思います。私の両親でさえ思いもいたらなかったと思います。それだけ私は、大変重い自閉症を持っている子どもでした。今でも軽いとは言えません。でも、私にわかるように伝えるなどの工夫をしてくれた母親の根気に助けられて今の私が存在しています。



私の話を聞いていただいてお分かりかと思いますが、重度の構音障害を併せ持っています。切り替えが困難で固まってしまうこともあります。でも、それには理由があります。何をしたら良いか、私には言っている人の言葉の意味が伝わらなかったり、私自身が頭で理解しても身体の中に信号を送れないからです。身体が思うように動かない、その時母は指示書を出してくれたり、絵カードを見せてくれたりします。私は言葉が消えてしまうことがあるので、内容を深く考えられない時もあるのです。「言葉だけで伝えればわかる。」と言われる方もいますが、それは自閉症の私たちには酷な話です。カードや指示書は自然と使わなくなっていきますが、緊張していたり、体調が悪い時は、それがお守りになります。それを持っているとわからなくなっても体に触れたりして思い出す時があります。ですから「言葉」だけで言わないで指示書やカードで見てわかるように伝えて頂くとありがたいです。私はこういう形で大学まで進みました。しかし学校生活を離れてから母との距離を置かなくてはと思うようになりました。


そのきっかけは「震災」でした。いろいろな人が色々なところで努力されているのを知りました。その時に母とは少し離れて、自分ができる事を見つけようと思いました。そこで自閉症協会に文章を載せることにしました。会報は2か月に1回発行されます。それに私なりに自閉症の事を書いて載せてもらっています。


私は少しでも自閉症のことをたくさんの方々へ知ってもらえるように、これからも努力していこうと思っています。



質問をいただいておりますのでお答えしていこうと思います。(抜粋)


①ヘルパーと外出(移動支援を利用)するようになってとても自信がついたと聞きました。以前の美穂さんと現在の美穂さんでは何が一番変化しましたか?


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今では家族以外のヘルパーさんと出かけたり、料理をしたり、仕事のまねごとまでできるようになりました。完璧とは言えませんが、母以外家族以外の方と一緒に出来ることが増えたことは、私に自信を与えてくれました。その自信は、言葉の練習の時にも現れています。小学5年から母が一緒じゃないと練習が出来ませんでした。しかし、今年になってからの練習は先生と二人でもすることが出来るようになりました。これには先生も驚いています。ただ母がいないと母音の正確度が下がると言われましたが、二人で出来るようになったのはすごい成長だと言われました。





②美穂さんがご自身の障がいについて学ぼうと思ったきっかけを教えてください。


私が自分の障害について学ぼうとしたきっかけは、周りの人たちと違うと思ったからです。なぜ、どうして違うのか。わからなかったからです。自閉症だからということでどれだけ人と違うのか?目で見てわかっても、内面がどうなのか知りたかったのです。そういったことを調べることができたらいいなと思うようになり、自分で大学に行けば心理学で学べると単純に思っていました。そんなに簡単なものではありませんでした。自閉症の事など勉強をする機会はありませんでした。しかし普通の人の考えや育ちを学ぶことができたのは良かったです。


これまでできない事は自閉症のせいにしてきました。しかし同じ自閉症の人でもできる方はたくさんいました。大学の授業では(自閉症について)詳しく教わる機会がありませんでした。しかし、卒論で視覚について研究したところ、友人が見えるのに、私には見えにくい範囲がありました。視覚でも健常といわれる人とは違うとわかりました。見えないのは左上と手前が良く見えません。


自閉症はコミュニケーションだけではなく、ほかにも身体的、感覚的な違いがあることを皆さんにも知っていただきたいと思います。私自身感覚、身体にいろいろな不便さをかかえています。しかし、見えない不便さなのでわかってもらいにくいのでぜひ、周りにいる自閉症のかたの身体にも注意してみてください。



③今の福祉制度についての思いを教えてください。またどのような制度であれば福祉=幸福の追求になると思いますか?


私は、福祉について詳しくはありません。ただ、福祉の制度は年々変わってきていると言われています。法がないと困ります。でも、法律が改正されても、それに伴う人の心が変わらなければ法があっても何も変わらないと思います。人間もアップデートされなければなりません。人そのものが変わらなくては、私たちのための福祉は遠いものではないかと感じています。自閉症は、厄介です。自分でも自分自身をコントロールできない時があります。そんな、厄介な障害を理解してくださいとお願いしているのです。あつかましい話ですよね。でも、そこのところを理解してもらえないと、私たちは生活に広がりが持てなくなってしまいます。


法が新しくても古くても、寄り添った支援があれば地域で暮らしていけると考えます。それが私たちにとって嬉しい事ですし、暮らしやすいことだと思います。法はただの枠組みにすぎません。中身は支援者と利用する私たちの人間性から作られるものだと思います。


私はこのように話しながらも色々なことをやってしまいます。この様子を見たら誰も私の事はこういう話をする人とは思わないでしょう。こういうことをしてしまうのが私なのです。皆さんに伝えたいという気持ちがあります。私たちの態度だけを見て判断しないでください。気になるものがあるとどうしても目が向いてしまいます。皆さんが言うとおりお行儀が良いとは言えません。それもわかっているのですがなかなかできないのも現実なのです。理解してくれる人が多ければ多いほど私たちは地域で暮らせると思います。


私は将来納税者になって、地域で暮らしていけたらと願っています。学校生活はとても分かりやすい世界でした。でも社会はとても分かりにくいです。社会の中がどうなっているのかわかりません。仕事、生活、色々な場所でいろいろな人がそれぞれ動いています。その動きがどうなっているのか?箱の中にあるわけではなく、それぞれが考えもつかないレベルで動いています。その中で私が何をしたら良いのか?どうやって暮らせば良いのか?どうしたら自分に合った仕事を見つけられるのか?それ以外にも知らないことがたくさんあって世の中は怖くて、緊張してしまいます。私が今生活しているのは社会の中のほんの一部です。その一部にもわからないことが多いのでとても不安になります。ただ、今はその一部の世界でも不安なく暮らせるように移動支援や生活支援を受けながら、不安を解消していけるよう努力しています。


日常は毎日色々変わります。変わることにイライラせず不安にならず生活をしていければ、5年後10年後には少し世界が拡がるのではと思い、今はその準備段階と思って生活をしています。


私は、母がいないとこのように皆さんの前でお話することができません。でも移動支援や生活支援を受けたおかげで今少し自信が持てています。その結果は小学校5年生からことばの先生に通っているところで出ました。その先生とは母がいないと練習ができなかったのですが、でも、今年に入ってから何度もできなかった、母と離れての練習ができるようになったのです。先生も驚いていて、今までの努力は何だったんだろうと言っています。


自信が持てるということは、生活に変化が現れるということだと、私自身、身を持ってわかりました。それは私の力だけではなく、支援してくれる人がいるという気持ちの表れだと思います。私はここの人たち(サポートセンターの職員)に「一緒にがんばっていこうね」と言われたことがとてもありがたくて、とても嬉しく思いました。今までは「なぜできないの?」とか「どうしてなの?」とか「美穂ちゃんは!」と言われていました。「これからは、一緒に考えて行こう。」と言われた時の嬉しさを、私は忘れません。理解していけばどちらもいい関係になるのではと思います。



皆さんから、たくさんの質問を頂きましたが、そろそろ時間なのでこれで終わりにしたいと思います。あとは遠山先生に今日の原稿を渡しているので皆さんで読んでください。

                                            以上


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◎以下、職員からの感想


・美穂さんのお話を聞き、初めから涙をこらえるのに必死でした。何度かサポセンでお会いしましたが、お母様の通訳、呼吸、身振り手振りでお互いが通じ合う心、どれだけ美穂さんにとってお母様への信頼が厚いものだということを感じさせられました。またお母様の美穂さんに対する愛情あふれるやり取りもとても素敵でした。


・聞けば聞くほど応援したい、力になりたい、関わってみたい、何かできないかとそう思わせる魅力がたくさんありました。


・命令されるのではなく、怒られるのでも、否定されるのでもなく、「一緒にがんばろう」という言葉で安心できたこと、やってみようという活力になったという話は、私たちが相手の方と向き合うときになくてはならない姿勢だと改めて感じました。また怒られる理由がわからないと同じ失敗を繰り返すので、その場で簡潔にわかりやすく伝えてほしいということも、非常に理にかなっている話だと思いました。信念は大切ですが、相手の声に耳を傾けられないとお互いにすれ違って辛い思いをするのだと思いました。


・「法律が改正されても人がアップデートされるわけではない」という言葉が印象的でした。世の中がアップデートできるように、我々相談員としても努力していきたいと思います。


・社会の中で認められるよう努力している、そして母親からも自立しようと頑張っている姿は、これまでGHでも努力を重ねてきたメンバー一人ひとりがそうなんだと改めて知りました。美穂さんから教えていただいた「聴く心の耳」をもっともっと澄ましメンバーの声を知っていかなければならないと思いました。


・法律が変わってマイナスの方へいったとしても、「福祉にかかわっている人が変わらず、思いやりを持っていてくれれば問題ない。」まさに根本的な部分をつかれました。


・「自信」というキーワードがいかに豊かな生活に結びつくのかわかりました。


・講演前に手記を読ませていただきましたが、身体の感覚や記憶については想像もできないものでした。


・伝えたいものを掲示する時に、(伝えたいものを)背景、風景化させないための環境の整備とは?を常に考え工夫していきたいと思いました。また、どのようにすれば伝わるのかの視点を常に持ちたいと思います。

                                           (以上)

このブログ記事について

このページは、nanohanaが2016年4月22日 13:57に書いたブログ記事です。

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